コソボ解放軍との戦闘で死亡したセルビア警官
ミルコ=ラドゥノビッチさんの葬儀
 国際監視団の監視活動をよそにコソボ第二の都市ペーチ(Pec)近郊で戦闘が始まった。この戦闘でセルビア人警察官4名が死亡した。翌日大きく迂回してモンテネグロを経由してペーチに乗り込んだ。第二の都市といってもペーチはプリシュティナとは較べることもできない。とにかく小さい街だ。プリシュティーナはまだ車がなければ市内を回るのは大変だ。しかしペーチは充分歩いて回れる。そんな広さだ。
 車でコソボ解放軍との前線近くの検問所に近づこうとした。ちょっと車を一軒家の軒先に停車したとたん家から人々が出てきた。すごい剣幕でアルバニア人に対して不満を私たちにぶつけ始めた。この家はコソボ解放軍の支配地域からたった1kmだという。言葉にもならない興奮が伝わってくる。サラエボのグルバビッツアに住むセルビア人を思い出す。セルビア人もいつ攻めてくるかわからないゲリラの恐怖を感じている。
 コソボ解放軍との戦闘で死亡したセルビア警官ミルコ=ラドゥノビッチさんの葬儀がおこなわれた。コソボ解放軍はセルビア警官を狙って攻撃しているようだが、警官といえども人間には違いない。
 アメリカ特別大使のリチャード=ホルブルグがプリシュティーナを訪問し、コソボ地下政府のイブラヒム=ルゴバ、急進派の代表アデム=デマチと会談した。アルバニア人地下政府の大統領府はサッカー場のすぐ隣にある。ホルブルグは「平和的解決」いつも訴えているが、コソボ解放軍はゲリラ活動をいっさいやめようとはしない。コソボ解放軍の広報官ヤクブ=クラスニチはドイツの雑誌「シュピーゲル」のインタビューの中でルゴバからの命令は受け入れないだろう。なぜなら彼の平和的解決は失敗したことが証明されたからだ」とコソボ解放軍がルゴバの支配下にないことを示した。
 と同時にアルバニア人側の政治的結束も一枚岩ではない。ホルブルグはルゴバと会談するときは必ず他の政治グループの代表は参加しない。アデム=デマチもその一人だ。ルゴバとの会談を終えるとホルブルグはデマチと会談をおこなう。しかしデマチがコソボ解放軍を支配しているというわけではない。
コソボを訪れたリチャード=ホルブルク・アメリカ特使(左)とボイスラブ=シェシェリ・セルビア副首相
 アメリカはこれが不満のようだ。ルゴバは地下政府の大統領でありながら、何らゲリラ組織とパイプを持たない。だから6月にアメリカはコソボ解放軍と直接接触したのだろう。そこでゲリラ組織を完全に統率できればアメリカはゲリラを交渉相手とするつもりだったのだろう。アメリカ外交史の中でも表だってゲリラ、テロリストと交渉したことはないのに、コソボ問題では交渉できるというのはどう政策転換をしたのだろうか。
 ここがアメリカに対して信用できないところだ。またアメリカといえどもコソボ自治州の独立は簡単に許されるものではないと判断している。いいところ自治権強化が落としどころだろう。そんな矛盾点を持ったアメリカが和平工作に奔走しても、セルビア政府にとっては大きな驚異とならないのだろう。
 ボイスラブ=シェシェリ・セルビア副首相はペーチの視察を終え、7月5日プリシュティナで記者会見をおこない、コソボ解放軍はあくまでもテロリストであるという立場を崩さなかった。テロリストである以上軍事的に鎮圧するのは当然ということなのだろう。ただアルバニア人政治グループとの対話をすぐにでも始める用意はあり、話し合いで解決できると発表した。ボスニア内戦では、私設軍隊を送り込み内戦を複雑化してきたシェシェリだが、コソボ問題では私設軍隊の派遣は考えていないという。立場が立場だけに以前と違ってソフトになったものだ。

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