第二ラウンドを迎えたコソボ和平交渉
1999年3月18日 坂本亜由理

コソボへの駐留準備を始め、マケドニアのスコピエ空港に集結する英国軍
 アメリカ・EUはどうしてもコソボにNATO軍を送りたいようだ。今年がNATO創設50周年にあたる。この行事をコソボで大々的にその存在を見せつけたい。コソボ和平会議は3月15日から再開された。アルバニア住民代表は西側が提示した和平案に調印すると報道されている。セルビア側は依然和平案の受け入れを拒否している。セルビアの対応は当然である。元々ランブイエで行われた1回目の和平会議で「政治的部門で合意した」と発表したものの、実質的にはランブイエで何も合意されていなかったのだ。この発表の記者会見で取材していたある日本人記者はランブイエの失敗を語った。
 和平案拒否の姿勢を崩さないセルビア側に圧力をかけるためNATOの空爆最後通告で何度も脅してきたが、それもセルビアには通じなかった。このまま和平交渉の主導権をセルビアに握られ続けたら、NATOの面目は丸つぶれになってしまう。そこでアメリカが考えたのが、コソボ解放軍(KLA、アルバニア語ではUCK)の政治代表のアデム=デマチを辞任に追い込むということだ。
 3月2日、コソボの州都プリシュティーナでデマチは記者会見を行い、その地位を降りる発表を行った。デマチはコソボのネルソン=マンデラと呼ばれ、コソボの独立を唱え共産政権下のユーゴスラビアで獄中生活を送っていた。筋金入りの強硬派である彼はランブイエで提示された和平案は当然受け入れられるものではない。そこにはコソボの独立の可能性が明記されていなかったからだ。こんな邪魔者の影響力を排除し、3月4日ボブ=ドール元米上院議員がイブラヒム=ルゴバ・コソボ民主連盟代表とマケドニアの首都スコピエで会談した。この場でアルバニア人側は和平案に調印することを示唆したのだ。
3月2日にコソボ解放軍(KLA)の政治代表を辞任したアデム=デマチ氏
 あくまでもセルビア側は国内問題と捉え、コソボ自治州のアルバニア人問題を独自の力で解決しようとしている。だからランブイエ同様パリでの第二ラウンドの交渉団はセルビア共和国の関係者しかセルビア側は出席していない。ユーゴスラビア連邦代表は入っていない。一方アルバニア人の交渉団はコソボ解放軍の関係者とイブラヒム=ルゴバ・コソボ民主連盟代表などである。出席者の顔ぶれは一緒だが、アメリカに直接支配されたアルバニア人側はこの交渉でどのような利益を勝ち取るのだろうか。
 ランブイエの二の舞を踏みたくない西側諸国はパリでの和平会議にも交渉期限を設定するようだが、効力を失った「空爆最後通告」が絵に描いた餅となった以上、この会議の行方は糸の切れた凧となったに等しい。落としどころは決まっていない。
 ボクシングは12ラウンドまである。第二ラウンドで片が付かなければ最終ラウンドまで続ければいい。NATOをセコンドにつけ、空爆という必殺パンチを身につけたアルバニア人側はそれが空振りに終わり、スタミナ切れのようだ。今のところ空爆パンチをかわしてきたセルビアが判定では有利だ。さて最後にリングに残るはどちらだろうか。ただ欧米諸国はリング上での勝負にこだわらずリングサイドでの乱闘に持ち込もうとしている。レフリー役を務めていたOSCE検証団はリングから逃げ出し、観客の目はリングサイドの「空爆」乱闘に注目する。リング上に残ったアルバニア人とセルビア人は何をしでかすか分からない。またクロアチア・ボスニア内戦での失敗が繰り返されることになりそうだ。

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