一カ月の月給より高い自転車や、荷物を積んだ荷車を押す人たち。
工場の建物には「敬愛する金日成同志を首班としている党中央委員会を
命をかけて死守しよう」というスローガンがかかる。
(1/3からのつづき)

 船はさらに近づき人の姿もはっきりわかるようになる。何人もの国境警備兵が銃をもって立っていて、国境の緊張感が伝わってくる。岸辺には北朝鮮の国旗やハングル文字で、人民の団結を即すスローガンがペイントされた船がたくさん泊まっているが、どれをとっても外見はひどいものだ。軍用船らしいのはそうでもないが、漁船らしいのは船の形を保っていないものが多く、今にも沈みそうなものがほとんどだ。傾いて泊まっている船もあって、こちらが心配になってくる。そのような船でも人は乗っていて、ペンキを塗り直したり、バケツで水をかき出したりなどの作業をしている。
 また何をするでもなく船着き場に人々はたたずみ、集まっている。人は多いが活気はなく、それぞれただぼーっと突っ立っているか、座り込んでるだけ。中国の国旗をつけた遊覧船が来ると「また来たか」といった顔つきで見る。手をふっても誰も応えてはくれない。
国旗がはためく木造の警備艇。
岸には国境警備兵が銃を携えて立つ。
 無表情な人々の後ろには何かが入った袋が積み重ねられている。別のときに乗ったモーターボートの操縦士に、あれは何なのか聞いてみた。「俺にはわからない」との答えが返ってきた。食糧にしては形が箱のように整い過ぎているし、重量感が感じられない。河の上流から運ばれてきたのか、国境貿易で中国からやってきた荷物なのだろう。しかし疑った見方をすれば、外国人の目に触れる場所だけに、食糧が不足しているといわれる北朝鮮が「我が国は物資が豊かだ」との宣伝のために積み上げられているとも考えられる。
 下流に向かって進むと、大きな荷物を積んだ自転車(近距離間の移動も制限されている北朝鮮で私有自転車はほとんど無く、おそらく公的機関の自転車)や荷車を押す人、川べりを散歩する人、船の上に立ち、鋭い目付きでこちらをにらみつける国境警備兵、スローガンの書かれた看板、煙の出ていない煙突が立つ工場の建物などが見られる。

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