「和歌山県園部地区で何が行われているのか」

「朝日新聞の犯した罪」

 朝日新聞のスクープは正に迷宮入りに思えていた毒物カレー事件解決の突破口に思えた。毒物カレー以前にこの園部地区の住人宅に出入りしていた関係者がヒ素中毒に似た症状で入院していたことが判明したからである。ここでの接点は「ヒ素」しかないのだが、この狭い地区内でカレーに混入されていたヒ素による患者が新たにそれも事件以前に現れたのである。だれもがこの住人が怪しいのではないかとの疑問を抱くことだろう。そしてこの記事が掲載されて直ぐに逮捕されていたならばそれはまさしく「スクープ」として評価されたに違いない。
 この日午後には東京からワイドショーや雑誌関係者の多くが和歌山入りし、園部地区の疑惑をかけられた家は多くの報道陣によって取り囲まれる事になった。朝日新聞のスクープによって。
 ここで考えなければならないのはなぜ朝日新聞はこのスクープを事件から一ヶ月目の8月25日に打ったかである。一般の読者には朝日新聞の「スクープ」にしか見えないこの原稿だが、実は同じ様な情報は多くのメディアが事前から掴んでいたことが調べによって分かっている。確かにスクープは形にして発表した段階で始めて「スクープ」になり、知っていた、調査中だったでは「スクープ」ではない。今回匿名を条件にある記者がこの朝日新聞の「スクープ」に関して語ってくれた。
高さ170cm以上ある脚立が玄関先に並んでいる
 「あの記事と同じ内容は朝日の記事が出る10日程前からわが社も掴んでいました。確かにヒ素が関係している事で一層その住民は怪しさを増したわけですが、その段階で原稿にする事はしませんでした。なぜなら警察の捜査は私たちが掴んだ情報と同じ様な位置にあり、この段階で原稿を書くことは悪戯に捜査を伸ばすだけだと思ったからです。またカレー事件との関連性はあったとしても証拠がない。それにあの家庭には子供も居ますからね。それを考えた場合逮捕されると決まった時点で怪しい住民として原稿を書けばいいのであると私は思うんです。確かに朝日に先に書かれた事は悔しいですが、私たちはジャーナリストであって警察ではありません。そして一昨年、奈良で起きた月ヶ瀬の事件もありましたし、何とか今起きているような混乱を避けたかったんです」。
 メディアの多くが情報を掴んでいながら形にしなかったのはこの様な事にある。では朝日新聞の記者はどのように今回の「スクープ」を考えているのだろうか。これは現地で朝日新聞の記者に疑問を持ったある社の人物が質問した内容をまとまたものである。
 まずその記者は犯人と決まった段階でないのになぜあの時点で原稿を書いたかを質問した。そこで帰ってきた言葉が「あんなのはやった物勝ち」という言葉だったと語る。さらに他の社も掴んでいながら書かなかったのはこの様な(自宅を報道陣が取り囲む)状態を避けるためだったのではないかとの質問に「そんな協定はなかった」とも答えている。日頃人権問題を叫ぶ朝日新聞は要するに人権よりもやった物勝ちとして考えているのだろうか。これは一部の人物が答えたものであり、朝日新聞の公式な返答ではないにせよその様に思う人物がいることは確かなようである。
 この疑惑の家庭には小学校に通う子供もおり、狭いこの地区であの「スクープ」と呼ばれる原稿を掲載した場合には現在のように学校に行けなくなること事も分かっていたはずである。現時点(9月12日)で2週間以上も報道陣がその家庭を取り囲み、子供は学校に行けない。そして警察はこの家庭を朝日新聞掲載後、一度も(苦情のため呼んだことはあったが)捜査にはいっていないのである。次から次に書かれる両親の過去と憶測。これらを子供達そして身内の人間はどのように感じているのだろうか。仮に容疑者として警察に身柄を確保された場合、残された子供達や身内の人々は夜逃げなり今後の事を考えられるだろう。しかし今の状態では子供や身内は信じるしかないのである。
 本当のスクープは逮捕されるその日に打つものである。それが残される身内や子供に対する思いやりではないのだろうか。朝日新聞はこの身内の苦しむ期間を伸ばし、今も苦しめ続けているのだ。
 私は今回の取材中にこの家庭の子供と親しくなったのだが、学校にも行かず部屋にこもったままである。テレビや新聞を見れば、そして窓から外を見れば...この子達の苦しみを朝日新聞はどのように感じているのだろうか。

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